ある日の出来事
人はみな、異なる瞳の色で生きている。
それに気づいていない者も多いけれど、
とにかく、その膜をはがすことはなかなか出来ない。
だって、痛いものね。
薔薇色の瞳と灰色のそれとでは、同じ事柄でもまるで違った様相に映ることだろう。
どれか一つに色を決められないから厄介で、
しかし、だからこそこの世は、
たぶん美しい。
今年のハロウィーンの日に、人類は70億人になるのだという。
この地上を見つめる、70億の色の瞳…
世の中に確実なものは、起きた出来事だけ。
どんな色を通して、自分はそれを見ているのだろう。
見つめた途端に、真実は、70億に彩られた藪の中に葬られていく。
確実なのは、出来事が起きたという、ただそれだけ。
隣にいる人には、まるで違うものに見えているのかもしれない。
ある日の出来事。
あなたはそれを、どんな色で見るのだろう。
離風霊船 2011年11月公演 伊東由美子新作 『ある日の出来事』
11月9日(水)〜13日(日) 中野ザ・ポケット
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